重要文化財「正法寺」(岩手県奥州市)展覧会2019

正法寺は南北朝時代の貞和4年(1348年)に開かれた東北地方最初の曹洞宗寺院で、文化8年(1811年)に建築された法堂・寛政11年(1799年)頃に建築された庫裡・寛文5年(1655年)に建築された惣門は、国指定重要文化財に指定されています。

https://shoboji.net

 

茅葺き日本最大級といわれる大屋根が圧巻の法堂は、間口約30メートル、奥行約21メートルの大きな茅葺の建物で、内部の広大で豪快な造りなどに寺の格式の高さと近世仏堂の特徴がよくあらわれています。庫裡は間口約33メートル、奥行約17メートルで、法堂に次ぐ規模の大きな茅葺の建物です。惣門もあわせて伽藍の保存がはかられており、現在も全国各地から修行僧が集まり、厳しい修行を行うなど、東北地方における曹洞宗の中心として信仰を集めた雰囲気は今に受け継がれています。
また、秘佛本尊の「如意輪観世音菩薩坐像」をはじめ、「開山無底良韶禪師頂相画」など岩手県指定文化財も多数あり、その一部は宝物庫で保管されています。

正法寺ワークショップ「正法寺を描いてみよう」

展覧会のコラム


世界遺産・毛越寺展覧会(2018,10/1-14)

東日本大震災から7年。アートにより東北復興支援を続けてきたなかで、2016年いわて国体文化事業展覧会終了後、次回の展覧会の候補として、世界遺産に認定された「毛越寺」が上がりました。

毛越寺は、岩手を訪れるたびに尋ねていたとても大切な空間でした。

藤原氏二代基衡公の「浄土を地上に再現する」浄土庭園への願い。それがかねてから私自身がテーマにしていたあの世とこの世をつなぐ表現に一致していたからでした。静かな気配、心が浄化される大泉が池、そして御本尊の薬師如来。現世の人々を見守り救う仏様です。

何度も足を運びながら、協力していただいた岩手未来機構の皆様とともに、展覧会の趣旨をお伝えし、毛越寺総務部の志羅山浩順様のご指導のもと、2018年10月の本堂特別公開の2週間、展覧会を開催するに至りました。

展覧会開催から2週間で約10000人の方が来場され、作品をみていただきながら、思い思いの感想を伝えてくださいました。

 

<作品解説>

今回の展覧会の作品は、初めて挑戦する大きな屏風画2枚と、100点あまりの和紙のスケッチによるインスタレーションです。

毛越寺・大泉が池からインスピレーションを受け、本堂の空間にアートとして再現しました。この空間を池と見立てて、諸行無常、移ろいゆく人生が、池の水面に映り込む姿を表しました。
いろいろな高さで設置された和紙は、水面を表現しています。上段の和紙には、誕生の瞬間。下段にいくにしたがって死が近づき、真っ白から、薬師如来の色である瑠璃色に染まっていきます。瑠璃色の青は、死と浄化の意味を込めました。その数多くの人生を映した水面の先には、阿弥陀如来来迎図の屏風画があります。
浄土から迎えに来る仏様たちは、命を全うした瑠璃色の魂に、何を語りかけるのでしょうか。
そして生まれた時よりも、さらに深い白の魂に再生していきます。
命はこうして循環し、意味意義を深めていくのではないかと感じています。
2011年3月11日にもたらされた東北の未曾有の出来事は、私たちに多くのことを問いかけました。実に多くの別れを体験しながらも、悲しみを胸に、再び新しい社会を作り上げ、一歩、また一歩と進んできました。そこには、数々のドラマがあったことでしょう。それは水面のように、一瞬の煌めきかもしれませんが、確かに存在した、どこまでも美しく、かけがえのない煌めきではないでしょうか。
浄土を現実の世界にこそ再現したいと願って建てられた毛越寺のように、今を生きる私たちも、愛と慈しみに溢れた世界が 心の中にいつも満たされていることを願います。そしてこの命を、しっかりと全う出来るように、祈りながら。

長友心平


The theme of this work is "life".
My inspiration comes from the pond; Oizumi Ga Ike, in Motsuji. The way I express “life” is like the phantasmagoria, reflected on the surface of the pond.
The upper row of the Washi paper expresses the moment of birth. 
The color is white.
As you progress to the bottom row, death approaches. The colour of washi paper gradually changes from white to blue; the colour of Yakushi Nyorai.
…. To represent the spiritual meaning of death and purification
Within the Byobu-ga, the lives of many are reflected beyond the surface of the water.
This is the painting of Amitabha Nyorai coming from the Pure land to salvage the people. The painting is called “Raigu-zu”.
What do the Buddha say to the lives of the blue souls that have wholly acquired life.
And our soul will regenerate to a deeper white soul than the day we were born
I feel that life will circulate in this way and it will continue to create a deeper meaning of “living”.
The Great East Japan Earthquake,March 11, 2011, unprecedented disaster has been asking a lot of things.
Even though the people of the region have been scattered near and far, a new society continues to rebuild.
There would have been a lot of dramas.
Although the beautiful sparkles on the surface of the water may be there for an instant, the existence of this spectacular sight is definitely irreplaceable.
Motsuji was built in hopes to reproduce the Pure Land to the world we live in now. Just like history, I pray the people living in the current world will also have the heart to keep the love flowing.
Last sentence. "I will continue to pray for the rebuilding of life."

Shinpei Nagatomo
・・・

作品說明

本作品主題是「生命」。從
毛越寺的大泉池獲得靈感,本堂的空間本身作為藝術品的作品。

整體上是以大堂的空間視為水池,具體表現出反映在水池水面上的諸事無常(註解:佛教用詞,表示森羅萬象無限變化)與多變人生的樣貌。在不同高度上裝飾和紙呈現出水池的水面,和紙的上端表示誕生的瞬間,越往下方表示越靠近死亡,顏色也從上端的白色往下染成藥師如來的琉璃色,琉璃色的藍有死亡與淨化的含義。

反映出許多人生的水面的深處裡則有畫有阿彌陀佛前來迎接的屏風畫,宛如從極樂世界的淨土前來迎接的佛祖們對著走完人生而轉換成琉璃色的靈魂們輕聲呼喚。然後再生成比誕生時更加潔白的魂魄。感受到生命就是如此循環,加深生命的意義。

2011年3月11日重創日本東北的大地震,也給與我們深思的機會。實際體驗到許多生離死別的同時,將悲傷銘刻於心,再度重建新社會,不斷一步一步往未來邁進。在那過程裡有許多故事,或許就像是水面一樣,只是那變化的一瞬間,但確確實實存在著,而且那瞬間相當美麗,散發出無法取代的光芒。

就如同期許在現實世界裡重現淨土世界而建造而成的毛越寺,活在現今的我們打從心裡期許世界可以充滿愛與慈悲的世界,然後生命也可以順利完成所被期待的使命。

長友心平

 

<thanks> 

 

 

宮坂葉月/

 

Fuad/エリカ 

 


毛越寺展覧会によせて

展覧会までの制作日記はこちら。

https://ameblo.jp/shinpei-nagatomo/theme-10106866458.html


岩手の未来を支えるデザイナーであり講師でもある竹村先生が、毛越寺の作品展のワンシーンを撮影してくださいました。
ちょうど西日が差し込み、和紙の作品に反射する美しい景色。まさに、コンセプト通りの毛越寺大泉が池に浮かぶ水面(みなも)。揺れては消える水面に描かれる儚い人生。どんなことが起こっても、仏様は、その瞬間瞬間、慈愛を持って見守ってくださっている・・。そんな想いを込めて作り上げた和紙の空間でした。やがて命が尽きるとも、その魂が求めるその人だけの音楽を奏でながら、壮大に迎えてくれる25人の菩薩と阿弥陀如来。命は迎えられ、浄化され巡っていく。この屏風画のモデルは仏様ですが、宗派は問わず、信仰に問わず、人が生きていく中での「祈り」の形を描きました。命は尊いものです。どんなことがあっても、愛とともにあるのだと思います。

私は幼い頃から、「臨終の瞬間」にずっと心を向けていたような気がします。絵画でも、音楽でも、映画でも、そういう場面に魂が揺さぶられるのです。天国のクジラも、根底にある力がそうさせてきたのだと思います。走馬灯のように人生を振り返り、旅立ちの時を待つ。幼き命も、不慮の出来事も、悔いなき人生も、悔いのある人生も、「生きた」という証が残ります。そして、それを受け入れる家族や知人の心に刻み込まれます。ともに過ごした時間にありがとうと言えても、言えなくてもです。清濁込めて、命は美しい。人間も動物も植物も。その片鱗を池の水面に込めて描きました。

私は祈ります。よりよく生きれますように。全うできますように。命が巡り、今ここに生まれてきたことをいつも感謝できますように。毛越寺だからこそ生まれた作品展だと思います。戦乱続く平安時代から、この場所はずっと祈りの場所でした。現世に浄土を再現すること。それは悲願です。そして現代の私たちにも受け継がれていきます。展覧会は10月14日15時まで。来寺された皆さまにとって、穏やかなひと時になりますように。

長友心平


釜石でお付き合いのある、三陸いりや水産の宮崎ご夫妻が毛越寺にいらっしゃいました。以前「三陸ブイヤベース」のイラストを描かせていただきました。宮崎ご夫妻は以前フランスに在住し、震災後に釜石に戻られましたが、さすがフランス仕込み博識ぶり、展覧会の根底にある裏テーマを一瞬で見抜き、いろんな感想をいただきとても刺激になりました。

会場には、海外の方もたくさんいらっしゃいますが、ちょうど来ていた香港と台湾の学生さんたちに、英語で展覧会の趣旨を説明してくださいました。ご自身の震災体験のことや、それ以降の長友心平の活動など。熱心に聞く学生さんたちの姿を見て、胸が熱くなりました。それに、ダイナミックに説明されるとしこさんを見て、まるでルーブル美術館のギャラリーガイドか!?と思えるほど。素晴らしい時間でした。なんだか海外の方にも、たくさん見ていただきたいなぁと思いましたよ。宮崎ご夫妻ありがとうございました。




毛越寺HP

http://www.motsuji.or.jp/index.html

〒029-4102 岩手県西磐井郡平泉町平泉字大沢58 

TEL:0191-46-2331 FAX:0191-46-4184